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最高裁判所第二小法廷 昭和54年(行ツ)69号 判決

東京都三鷹市井口三五七番地

上告人

榎本武男

東京都武蔵野市吉祥寺本町三丁目二七番一号

被上告人

武蔵野税務署長

仲尾庄一

右指定代理人

岩田栄一

右当事者間の東京高等裁判所昭和五三年(行コ)第六八号所得税課税処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五四年二月二〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨選択、事実の認定を非難するものであつて、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八五条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 監野宜慶 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 栗本一夫 裁判官 木下忠良 裁判官 塚本重頼)

(昭和五四年(行ツ)第六九号 上告人 榎本武男)

上告人の上告理由

一、原判決は事実に反し、実情と互うものであるから、憲法十三条、十四条に反するものである。

二、原判決は事実と相違するので民事訴訟法第三九五条の六項の理由に齟齬あるときに該当する。即ち譲渡代金が三億円でないのに、三億円と誤認して居ること、つまり真実に反した一方的な証言等を取り上げ、真実を述べて居る原告側の陳述には少しも耳をかさない判決は個人としての尊重を無視し法の下の平等を著しく損うものである。

控訴の際原告の述べた事柄について何等の反論もなく判決文二枚目表から裏にかけての「控訴人主張の違法はなく」と云うのみでは甚だ納得のゆかないもので、個人の尊重を無視し法の下の平等を損う一例である。

又同、六行目原判決事実欄第二記載のとおり(但し原判決五枚目 記録二二丁 表六行目に「領け」とあるのを「預け」と改める)とあるが昭和五三年一一月二八日の被控訴人の答弁書には、そのような記載もなく、原判決文を改めると云う意味に解するのであるが、してみると、上告人もそれによつて再度控訴状を書き直さなければならぬわけで、此の意味に於ても齟齬あるときに該当するものである

尚その六枚目裏二行目「右事実といずれも証人関根正の証言」より……七枚目、三行目「原告名義の定期預金として預け入れたか、残額一億円については、最終的には、前記の通り架空名義の預金として分散したこと、が認められる。迄の文章について(真に成立したと云う等)納得のゆかぬ点が多々あり、且つ、関根正の証言の際も不明な点があつたので、発問を求めたのであつたが制止されてしまつたもので、明らかに民事訴訟法第百二十七条三項に反するもので、又右文中にある「預け入れたか」は「預け入れたが」なのか「分散したこと、か認められる」は「分散したこと、が認められる」なのかも不明瞭である。

因に上告人は昭和五三年五月二十二日東京地方裁判所民事第三部宛準備書面(九)を提出して、其の最後頁五行目より、甲七号証二頁、二-三行目に「一億円ほどの金を簡単に渡す筈がなく「借入金」でないことは確かですと書いてあるが、之は「土地代金」でないことは確かですの誤記であることを一応記載して置いたけれども、見落して居るのではないかと思い再度記載する。

亦真実の内容を全然知らない関根正だの、高安威だの、五位判功等の皮相的判断による証言(之については控訴状の最後頁、裏側六行目、右一、二、三項に記載した如き誤つた考へ、おかしな先入感で物事を判断と記しておいたが)つまり右一、二、三ばかりでなく、其の他誤つた考へ、おかしな先入感で物事を律して居つたのでは、其の帰結として前にも述べた発問の制止も起つたのではないかと考へざるを得ないもので其の他同じく取決の際には居合せてなかつた高安江津子の場当り的証言等を一方的に総合した判断では真実の結論の出ないのは無理ないがこれでは上告人を法(憲法十四条)の下で平等に扱つて居るとは到庭考へられない。

七枚目一行目には虚偽の帳薄処理をする一方とあるが、どうして虚偽の処理をする者を責めないのか、又どうして上告人提出証処については全然無視し虚偽帳薄処理をすると考へる側を信用して其の都合の良い部分のみを鵜呑にするのか不可解千万である。

いずれにしても事実に反した課税を強いられることは明らかに憲法十七条に抵触するものであることを強く訴へるものである。

高安氏が水戸税務署に一旦二億円にて申告して居ること、又其れを修正して、其の弁解に榎本武男に協力する為の経理上の処理とは一体何を意味するのか、譲渡代金が三億円と云うなれば初からどうして三億円に申告しなかつたのか、ここらが話のくい違いの起る基で、甲十五号証は、上告人側の売渡人名義の件で本人(上告人)が直接売るか、間に株式会社エノモトを入れるかの違いだけで、もし入れる場合は之が契約書となるわけだつたもので、其の他の点については全然変更もなかつたものであつたことは、之に相当の印紙を貼り双方の捺印をして、契約書自体としては、ととのつて居ることでもわかる通りで、もしそれが違うと云うなれば、本質的に其の契約そのものが無効と云うべく、そうなれば当然課税問題など初から起らない事柄となるものである。

尚一審中、高安進、高安江津子に対する証人申請をしたけれど高安進からは公用その他の理由で三回も不出頭になつてしまい、高安江津子についても子供の病気とかでことわられ、正常なる審理の出来なかつたこと、又常陽銀行元支店長五位判功の関根正聴取の申述についても先に一部事実と相違する点を指摘はしたが既に外へ転勤になりどこに居るかも分らなかつたこともあつて証人申請も出来なかつたが、手段を尽くせば分ると思いますので、新に証人申請をしたいと存じます。高安進についても公用の隙も出来たのではないか。高安江津子についても子供も多少大きくなり少しは手も離せる状態になつたのではないかと存じ、それぞれ再度証人として申請を考へて居る次第である。

何れにしても一番重要な参考人である高安進を三回も呼出して一度も出頭無しでは本当の事が分らないのは当然のことである。

以上

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